学校のカリキュラムにも組み込まれ、昨今は企業からも注目されているキャリア教育。本記事では、キャリア教育の基本と重要性を紹介します。なぜ今キャリア教育が必要なのか、学校や保護者、学生はどう感じているのか、キャリア教育の実態と、企業の関わり方についても解説します。
そもそもキャリア教育とは?
キャリア教育の定義
文部科学省は、キャリア教育の定義を以下の通り定めています。
「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」*
*引用:文部科学省 小学校キャリア教育の手引き(改訂版)
学習指導要領の改訂によりカリキュラムに組み込まれる
文部科学省による定期的な学習指導要領の改定の中で、キャリア教育の位置づけが強化されてきました。
2008年には、文部科学省が小中学校の学習指導要領を改定する際に「生きる力」を理念に掲げ、2017年に文部科学省から発表された新しい学習指導要領では、この「生きる力」という要素が強調され、キャリア教育が幼稚園や小中学校、高等学校のカリキュラムに組み込まれました。
詳しくは「新しい学習指導要領 生きる力 学びの、その先へ」に記載されています。
学校におけるキャリア教育の目的
文部科学省がいうキャリア教育のステージは学校で、キャリア教育の主要な目標は、一人一人が社会的・職業的に自立し、その基盤となる必要な能力や態度を養成することです。つまり、子どもたちが社会で生きていくために必要不可欠な能力を育成することが、キャリア教育の最大の目的なのです。
なぜ今、学生向けにキャリア教育が必要なのか?
現代の社会はますます多様化しており、従来のキャリアパスだけでなく、新たな職種やキャリアの選択肢が増えています。学生にはこれらの選択肢を理解し、対応するスキルを身につける必要があります。そういった時代背景からもキャリア教育は必要だと言えるでしょう。
では、実際に授業を行っている教師や、子どもの保護者はどう思っているのでしょうか。ここからは、教師や保護者へのアンケート調査から見えてきたキャリア教育の必要性を解説します。
8割以上の教師がキャリア教育の一環である出前授業を評価
学校におけるキャリア教育の取り組みの中に、出前授業がありますが、プラスエムが2019年に実施した「企業・団体による教育支援活動に関する教員対象アンケート調査」によると、「企業・団体が行う講師派遣による出張授業を受け入れたこと(または予定)がありますか」という質問に対し、73%の学校が、受け入れたこと(または予定)があると回答しています。
更に、「これまでに受け入れた企業・団体の講師派遣による出張授業を、今後も受け入れたいと思いますか」という質問に対しては、86%の学校が「今後も受け入れたい」と評価しており、教員もキャリア教育が必要だと考えていることが伺えます。
98%の親が子どものキャリア教育の場は少ないと回答
株式会社イー・ラーニング研究所が発表した、20代~50代の子どものいる親を対象とした「2022年:非認知能力ならびにキャリア教育に関する調査」によると、「子どもに、どんなキャリア教育を行ってほしいと思いますか<MA>」という質問では、第1位が「自立する力を身につける学び」(252)、次いで、「目標を見つけられる学び」(241)でした。
子どもたちが自立していく過程の中で、世の中を広く知り、目標を持って将来に向けて歩んでいく力を幅広く身につけて欲しいと願っていることが分かります。
しかしながら、「子どものキャリア教育の場は少ないと思いますか<SA>」という質問に対し、98%が「はい」と回答しています。
新しい学習指導要領がスタートし、国を挙げて強化しているキャリア教育ですが、子どもが「生きる力」を学ぶ機会を、これまで以上に増やしていかなければいけません。
学生や生徒にとってのメリット
学生や生徒にとってキャリア教育はメリットはあるのでしょうか。
「働くこと」への理解が深まる
キャリア教育は、まず第一に「働くこと」に対する理解を深める機会を提供します。例えば、卒業生を含め企業で活躍する人の講演を通じて、実際の仕事についての洞察を得ることができます。これにより、学生は働くことに対するイメージをより具体化でき、なぜ自分が働くのかという職業観や価値観を明確にすることができます。また、長期のプロジェクトなどを通じて「課題解決能力」や「主体性」などの重要なスキルも養うことができ、働くことの魅力ややりがいを学ぶことができます。
自分のキャリアについて具体的に考えられる
キャリア教育を受けることで、自分自身のキャリアについて具体的に考えられるようになります。例えば、ワークショップなどを通じて自己分析を行うことで、自分の特性や傾向について新たな気付きを得て、自己理解を深めることができます。
また、指導を受けながら、将来に向けた卒業までの具体的な目標を設定する機会が得られることもメリットの一つでしょう。さらに、設定した目標に対して実際に行動していく中で、自己分析を繰り返すことで、キャリアプランニング能力を向上させることが可能です。
学びへの意欲が向上する
キャリア教育は、学びへの意欲が高まることもメリットです。
キャリア教育を通じて、学生は自分のなりたい将来について具体的に考え、目標設定ができるようになります。すると、そこから逆算して「自分の将来のために、今何をすべきか」が分かり、学ぶことへの意欲向上につながります。早い段階で「考える機会」を持つことは、将来のキャリアにおいて大きな利益をもたらしてくれます。
キャリア教育を推進する上での課題
国立教育政策研究所が、2013年に公立小中学校、高等学校を対象とした「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」によると、小学校の学級担任に向けた「学級のキャリア教育について困ったり悩んだりしていること」という質問では、最も多かった回答が「十分な時間が確保できない(40.1%)」でした。
また、20%以上の人が「キャリア教育に関する指導の内容・方法をどのようにしたらよいか分からない」「キャリア教育の適切な教材が得られない」と回答しており、普段の授業の準備などすでに多忙な中で、キャリア教育の指導内容を考案したり、教材を探したり、一から作成したりする時間を確保するのは難しいのが現状です。
今後、キャリア教育を推進していくには、地域や企業のサポートが必要なのです。
学生向けキャリア教育の企業の関わり方
前述した通り、学生へのキャリア教育を推進していくためには、企業や地域の協力が非常に大切です。経済産業省のキャリア教育支援ガイドブックでも「学生たちに社会の”ホンモノ”を教えられるのは、企業や地域の皆様です」と示しています。キャリア教育への企業の関わり方には以下のようなものがあります。
- インターンシップの実施
- 幅広い対象者に向けて会社見学の受入れ
- 職場体験、仕事体験の受入れ
- 各種イベントの実施
- 地域企業と協力し職業体験や研修会を実施する
- 出前授業を実施する
出前授業について詳しくは以下の記事でご紹介しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事ではキャリア教育についてご紹介してきました。いかにキャリア教育が必要なのか、また、キャリア教育を推進する上で課題があることをお分かりいただけたのではないかと思います。
子どもたちが「生きる力」を学ぶ機会を増やしていくためには、地域や企業が必要不可欠です。昨今、CSR活動などの一環として、キャリア教育支援を実施している企業も少なくありません。中でも、出前授業を導入している企業は多く存在します。
教育CSRについて詳しくは「教育CSRとは? 取り組む目的、メリットや事例を紹介」をご覧ください。
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