
企業のCSR活動における「出前授業」の重要性
企業のCSR活動や広報活動の一環として、「出前授業」を実施する企業が増えています。学校と連携し、社会課題や業界の魅力を子どもたちへ伝える取り組みは、社会との接点づくりとして大きな意義があります。
しかし、実際に出前授業を行う際には「どんなテーマが学校に受け入れられるのか?」「自社で授業設計するのは難しい…」と悩む方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、教育現場から歓迎されやすく、企業のCSR戦略とも親和性の高い出前授業のテーマ設計ポイントと、具体的なテーマ事例をご紹介します。

目次
学校から“歓迎される”出前授業テーマの選び方
企業が学校に出向いて授業を行う「出前授業」は、単なる社会貢献を超えて、次のような効果を生みます。
- 地域との関係構築
- 企業への信頼向上
- 子どもや保護者へのブランド理解促進
とくに教育現場との接点は、企業の社会的な姿勢を象徴するものとして評価されやすく、広報活動としての価値も高まっています。ですが、学校現場での授業には教育的な配慮や準備が不可欠です。「良かれと思って企画したが、学校側からNGが出てしまった…」といった失敗を防ぐには、「学校側にとって導入しやすいテーマ設計」が鍵になります。
1.学校カリキュラムとの接点を明確にする
出前授業が「総合的な学習の時間」や「キャリア教育」といった教育課程の中で実施できることを明示すると、教員側の理解と協力が得やすくなります。
学年別の単元と結びつける工夫(例)
・小学5年生 → 環境・エネルギー(理科・社会)
・小学6年生 → 働くこと・キャリア教育(総合)
・中学1年生 → 消費者教育・お金の使い方(家庭科)
・中学3年生 → 地域社会と福祉・防災(社会・技術)
2. 自社事業と“自然に”つながるテーマ
「出前授業=商品紹介の場」と捉えると、教育的意義が薄れてしまいます。しかし、社会課題を切り口に自社の取り組みや業界の役割を伝える構成にすることで、教育的な価値がより伝わりやすくなります。また、学校側にも受け入れられやすく、印象に残る授業につながります。
例:食品メーカーの場合
NG:「新商品を紹介する授業」
OK:「フードロス削減」や「物流と環境への配慮」
こうしたテーマであれば、製品や企業名を前面に出さずとも、企業の存在価値や貢献が伝わります。
3.子どもが主体的に学べる“参加型形式”を取り入れる
近年の教育現場では、子どもが自ら考え、発表する「主体的な学び」が求められているため、以下のような形式が好まれます。
- ワークショップ(例:エネルギーの未来を考える)
- ロールプレイ(例:仮想ショッピングで消費行動を学ぶ)
- 発表・ディスカッション(例:社会課題への解決案発表)
4.学校との事前調整を丁寧に行う
出前授業は、授業内容の充実だけでなく、「打ち合わせ・進行管理」も信頼獲得の重要ポイントです。準備段階で以下の資料を用意しておくと、学校側からの信頼が高まります。
- 授業のねらいと授業実施学年との関連
- 時間配分付きの台本
- 必要機材・準備物
- 学校側の役割(事前配布物など)
特に体験型授業では、流れが明確であることが教育現場にとって安心材料になります。
カテゴリ別 学校向け出前授業テーマ
ここからは、小・中学校でニーズが高いテーマをカテゴリ別にご紹介します。
環境・SDGs
環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)は、学校教育の中でも注目が高まっているテーマです。身近な話題から地球規模の課題まで幅広く取り上げることができますが、日常生活とのつながりを感じられる内容にすることで、「自分にもできることがある」と感じてもらい、未来について考えるきっかけを届けられます。
| テーマ例 | 解説 |
|---|---|
| 未来の暮らしとエネルギー | 電気やエネルギーの使われ方を探り、未来のエネルギーの姿を考える体験型授業。持続可能な社会の実現に向けた「選択肢を考える力」を育む。 |
| ごみと資源のひみつ | ごみの行方やリサイクルの仕組みを知ることで、日常の「捨てる」行為の先にある世界を想像するきっかけに。 |
| 海洋プラスチック | グローバルな環境課題を、カードゲームや動画を使って“自分ごと”として体験。「身の回りのプラスチック製品を考える」ワークも有効。 |
| フードロスを減らすには? | 食品ロス問題とその社会的影響を知る。グループで「捨てずに活用できる工夫」を考えることで、家庭でも実践しやすい内容に。 |
キャリア教育
将来の仕事や働くことについて考える「キャリア教育」は、小中学校の授業でも継続的に取り組まれています。出前授業では、実際に働く大人の話を聞いたり体験したりできる機会が、子どもたちにも先生にも好まれる傾向にあります。
| テーマ | 解説 |
|---|---|
| お仕事インタビュー ~私たちの仕事の裏側~ | 実際に働く社員が登壇し、仕事内容を紹介。子どもたちの質問に答える時間を設けることで、双方向の理解を深める。 |
| 未来の仕事を考えよう | AIや環境技術の進化により「これから生まれる職業」について子どもたち自身がアイデアを出し、発表するワーク。想像力と探究心を刺激。 |
| 社会を支える仕事図鑑 | 警察・医療・物流・インフラなど、普段の生活を支えている職業に焦点をあてる授業。「誰かの役に立つとはどういうことか?」を考えるきっかけづくりに。 |
| 将来を描くキャリアすごろく | 自分の興味や得意なことから「なりたい仕事」「やってみたい仕事」を引き出すワーク型授業。すごろく形式やカード形式でゲーム感覚にすると低学年にも対応可能。 |
より効果的な出前授業にするためのポイント
1. 「なぜこの仕事が社会に必要なのか?」を語る構成に
仕事が社会の中で果たしている役割や意味を伝えることで、子どもたちの理解や尊敬の気持ちが自然と育まれます。
2.多様な働き方・生き方に触れられる構成にする
性別・地域・学力にかかわらず、さまざまな立場の大人の姿を紹介することで、子どもたちの視野が広がり、「自分らしい未来」を考えるヒントになります。
科学・モノづくり体験
理科や技術の面白さを伝える「科学・モノづくり体験」は、子どもたちの探究心を育てるとともに、ものづくりの現場とつながるきっかけになります。実験やオンライン工場見学といった“体験できる授業”は、学校でも人気の高いテーマです。
| テーマ | 解説 |
|---|---|
| 身のまわりの“科学マジック”体験 | 空気・水・磁石など身近な素材を使った簡単な実験を体験。理科への関心や探究心を引き出す導入として最適。 |
| ○○の工場見学オンラインツアー | 実際の工場からライブ配信または録画映像で“製造の舞台裏”を紹介。社員が案内することで、職業理解ともリンク可能。 |
| 自分だけの○○をつくる!ものづくりワークショップ | 実際の製品の仕組みを応用し、工作キットなどを使って自分だけの作品をつくる体験授業。試行錯誤しながらつくるプロセスを通じて、創造性と粘り強さを育む。 |
| 未来のエネルギー・環境技術を学ぼう | 脱炭素・再生可能エネルギー・水素社会など、最先端の技術や研究をわかりやすく紹介。課題と解決策を考えるワークを通じて、理系分野への興味や社会課題への意識づけを狙います。 |
より効果的な出前授業にするためのポイント
1. 身近なテーマと結びつけて伝える
食品・家電・遊びなど、子どもたちの日常とつながる話題にすることで、実感をもって理解しやすくなります。
2.「かたちに残る体験」で満足度アップ
工作キットや写真など、成果物が残る内容にすると、授業後の振り返りや家庭での話題にもつながります。
金融リテラシー
「お金の流れ」や「経済の仕組み」について学ぶ金融リテラシー教育は、近年の教育改革の中でも注目されている分野です。子どもたちが自ら考え、体験しながら理解を深められる構成が求められています。
| テーマ | 解説 |
|---|---|
| おこづかいから学ぶお金の流れ | 「買う・売る・もらう・払う」の流れを疑似体験するワーク型授業。おこづかい帳やシミュレーションを活用して「お金の価値」を実感。 |
| 働く×税金の仕組み | 会社で働く→給料をもらう→税金を払う→社会インフラが支えられる、といった流れをロールプレイやクイズ形式で学ぶ授業。小学生高学年~中学生に特に効果的。 |
| 仮想ショッピング体験 | あらかじめ設定した金額で商品を選ぶゲーム。「欲しいもの」と「必要なもの」を区別し、計画的な支出を学ぶ。低学年でも楽しめる内容にアレンジ可能。 |
| キャッシュレス時代のお金の使い方 | 現金・電子マネー・クレジットカードの違いをテーマにした授業。中学生向けに「見えないお金」の注意点やトラブル事例も紹介。実社会への応用力を育成。 |
以下の記事では、内容づくりの詳細や実際の企業の成功事例をご紹介しています。
出前授業は未来への投資 〜教育・地域・ブランドの信頼構築へ〜
CSR活動の一環としての出前授業は、単なる社会貢献にとどまらず、地域とのつながりを深め、社会からの信頼を獲得する重要な機会です。自社の強みや価値を伝えながら、「子どもたちと未来を考える時間」を一緒に創り出せる貴重な場でもあります。これから出前授業や学校向けプログラムの実施を検討されているご担当者さまは、ぜひ本記事でご紹介したテーマやポイントを参考にしてください。
困ったら専門家に相談するという選択肢も
一方で、自社だけで出前授業の内容を考えるのは想像以上に難しいものです。そんなときは自専門家に相談するのも有効な方法です。専門家のサポートを活用することで、
- 教育現場のニーズや最新のカリキュラムに詳しいサポートが受けられる
- 社会課題と企業活動をつなげる企画の実現
- 工数を大幅に削減でき、社内リソースに余裕が生まれる
といったメリットがあります。
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