本来、企業は営利組織ではありますが、近年はそうした企業のあり方そのものが変化してきました。ただ単に収益を生み出すだけではなく、いかに社会的な責任を果たしていくのかが重視されるようになったのです。この記事では、CSR活動の意味や重要性、ボランティアや環境保護などのCSR活動に企業が取り組むことのメリットについて解説し、実際にCSR活動をしている有名企業の事例を紹介します。
CSR活動とは?
そもそもCSR活動とは、どのような活動なのでしょうか。ここでは、CSR活動の概要と企業が取り組む意味などについて解説します。
CSR活動の概要と目的について
欧米では、企業の存続には社会の発展が不可欠であるという考え方があります。言い方を変えれば、社会が発展するからこそ企業は発展するのだから、企業は社会を持続的に発展させていく責任を負っているということです。
企業のCSR活動は「社会的責任」を意味します。企業は消費者、投資家、従業員、環境などに配慮するのはもちろんのこと、社会貢献についても幅広く考慮しながら企業活動をしていく必要があるのです。なお、「企業の社会的責任」は英語では「Corporate Social Responsibility」となり、これを略してCSRと表記しています。
なぜ企業にとってCSR活動が重要なのか?
企業は商品やサービスなどを社会に提供することによって収益を生み出すため、企業と社会は相互に依存し合っている関係です。つまり、社会が発展しなければ企業も発展できず、企業が中長期的に成長していくためには、目先の利益だけを追いかけるのではなく、社会全体の成長や世界平和などにも寄与できるような組織を構築していく必要があるのです。
そのため、企業が現代社会の抱えている人権問題、環境問題、貧困問題などの諸問題に取り組むことは今や必須なのです。
CSR活動に取り組むメリット
現代の企業にとっては欠かすことができないと考えられているCSR活動ですが、具体的にはどのようなメリットが企業にもたらされるのでしょうか。主なメリットを挙げて、一つひとつ解説していきます。
イメージアップが見込める
CSR活動の目的についてのアンケートでは、大企業の64.3%、中小企業の55.7%が「CSR活動を行うのは自社のイメージアップのためである」と回答しています(東京商工会議所調べ)。実際、消費者の健康状態や環境問題などを考慮した取り組みによって企業イメージがアップすることがわかっており、大企業の98.3%、中小企業の79.3%が「CSR活動に取り組んだことで企業のイメージアップにつながった」と回答しています。企業のイメージアップは自社商品やサービスのアピールにもつながりますので、結果として収益アップも見込めるでしょう。
関連企業からの信頼を獲得できる
継続的にCSR活動に取り組んでいる企業は、顧客や関連企業、株主や投資家などから強い信頼を寄せられます。関連企業との関係が強化されることによって、企業活動が円滑に推進されるとともに、最終的には収益向上にもつながります。
従業員満足度の向上が期待できる
CSR活動を推進していくことによって、自社の従業員の満足度が向上する側面もあります。自分の仕事が社会貢献につながっていることを自覚しながら働くことで、業務へのモチベーションが高まることが期待できるためです。これにより、企業の生産性や、社員間の人間関係にも良い影響を与えるかもしれません。そうすれば、企業の継続的な成長や優秀な人材採用にも寄与するでしょう。
不祥事のリスクを回避できる
企業の不祥事やハラスメントは近年、増加傾向にあります。CSR活動の意義が企業の隅々まで浸透していくことによって、おのずと法令遵守を意識した組織が構築されます。これにより、不祥事やハラスメントのリスクを最小化し、事前に回避できるというメリットがあります。
活発なコミュニケーションが可能になる
継続的にCSR活動に取り組んでいる企業には、CSR活動を進めやすい、すなわち積極的にコミュニケーションをとる企業風土が自然と醸成されていきます。部門横断的なコミュニケーションが活発な組織では、仲間意識、アイデア、イノベーションなどを生み出しやすいため、離職率の改善などに大きく寄与するでしょう。
CSR活動の事例
すでにCSR活動に取り組んでいる企業の中から5つの事例を紹介します。各企業がどのようなCSR活動をしているのかを知り、自社のCSR活動に生かしましょう。
セブン&アイ・ホールディングスの事例
2019年に「GREEN CHALLENGE 2050」を発表したセブン&アイ・ホールディングスは、プラスチック対策、CO2排出量削減、持続可能な調達、食品ロス・食品リサイクル対策の4つに取り組んでいます。例えば、CO2排出量削減の取り組みでは、店舗運営によるCO2排出量を2013年度に比べて2030年には50%削減、2050年には実質ゼロとすることを定めています。
本田技研工業株式会社の事例
「社会貢献にお金を出す」100社ランキングの第1位となった本田技研工業は、2019年度の社会貢献への支出額は95.7億円でした。本田技研工業は「未来へつなぐ取り組み」として、HONDAビーチクリーン活動、交通教育センターの設置など、環境保全や安全をテーマとした、さまざまなCSR活動に取り組んでいます。
株式会社ファーストリテイリングの事例
株式会社ファーストリテイリングは、「服のチカラを、社会のチカラに」をテーマに、さまざまなCSR活動に取り組んでいます。その活動は難民支援、災害支援、スポーツ文化の応援など多岐にわたっており、全商品のリサイクル活動、衣料支援、出前授業などさまざまです。
武田薬品グループの事例
「すべての人々が医療にアクセスできる世界の実現を目指して」をテーマに掲げている武田薬品グループは、パンデミックへの対応と準備、世界10都市でがん治療アクセス改善の持続的・革新的システムを構築し、子どもたちの「人生最初の1,000日」の健康状態の改善プログラム(ユニセフとの共同企画)などに取り組んでいます。
株式会社カプコンの事例
大阪のゲームソフトメーカーである株式会社カプコンは、ゲームに対する社会的理解を促したいとの考えから、小中学校を中心に出前授業や会社訪問の受け入れを実施しています。出前授業では、「仕事と算数の関係を学ぶ」「ゲームとの付き合い方を考える」などをテーマに、講師派遣とオンライン授業の2つの方法で講義しています。
CSR活動に取り組む際の注意点
CSR活動には、さまざまなメリットがある一方で、注意しておきたいポイントもあります。それは、短期的にはどうしても損失になってしまうケースが多いという点と、人材確保が難しい点です。
特にまだ若い企業や経営状況の厳しい企業などにとっては、これらの点は非常に高いハードルかもしれません。長期的視点に立ち、継続的に取り組むことで初めてメリットを見いだせるのがCSR活動ですので、この2つの注意点に留意しながらも、できるだけ積極的に取り組んでいきたいところです。
CSR活動を成功させるにはサポートサービスも活用する
すでにさまざまな企業が取り組んでいるCSR活動には、イメージアップや従業員満足度の向上をはじめとする大きなメリットがある一方で、人材確保が難しいといったデメリットもあります。
CSR活動の一環としては現在、出前授業を実施する企業が増えていますが、特に小中学生に向けた出前授業なら、株式会社スフレの「オーエンクラス」という選択肢があります。オーエンクラスは学校の需要と企業の要望を合致させ、先生と一緒に教材を作りこみ、授業を実施してもらうことができるサービスです。CSR活動への取り組みの第一歩として、一度検討してみてはいかがでしょうか。
また、出前授業については以下の記事で解説していますのでぜひご覧ください。