
「例年通り、春にパンフレットを制作し、夏にオープンキャンパスを開催、秋から出願を待つ…」大学広報において、このような広報スケジュールが何年も変わっていない場合、「学生に選ばれる機会」を逃しているかもしれません。
現在の高校生は、早い段階から進路を意識し、受験に向けて動いています。志願者数を安定的に確保するためには、従来型のスケジュールではなく、高校生の意思決定の流れを前提にした年間スケジュールの再設計が重要です。
本記事では、大学広報における年間スケジュール設計の考え方を解説します。

- なぜ今、スケジュールの「再設計」が必要なのか?
- 【step1】スケジュール設計前に不可欠な「3つの準備」
- 【step2】ターゲット別「2軸」で動く年間フロー
- 【step3】シーズン別・具体的アクションプラン
- 【step4】スケジュールを「形骸化」させない運用テクニック
- まとめ|「低学年への早期接触」と「年内入試対応」で勝てる広報へ
- 次のステップ|年間スケジュールを「具体施策」に落とし込む
なぜ今、スケジュールの「再設計」が必要なのか?
大学広報・学生募集を取り巻く環境は大きく変化しています。 特に注視すべきは、18歳人口の継続的な減少と、年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)の拡大です。
文部科学省の推計では、18歳人口は今後も中長期的に減少傾向が続くとされており、各大学はこれまで以上に「限られた志願者をどう獲得するか」という競争環境の激化が予測されます。
また、文部科学省による令和7年度の調査では、私立大学入学者の約6割が年内入試による合格者となっており、受験の主戦場は「年内」へ移行しつつあります。こうした受験方法の変化を背景に、近年は高校1・2年生の段階から大学の教育内容や特色を調べ、志望校候補を絞り込む学生が増加しています。つまり、年内入試で進学先を決定する高校生ほど、早期から情報収集と比較検討を行い、出願判断をしていると考えられます。
これらのことから、「いかに早く自大学を認知してもらい、興味・比較の土俵に上がれるか」という視点で大学広報の年間スケジュールを再考することが、学生集客を左右する鍵になると考えられます。
出典:
・文部科学省,2020,「18歳人口及び高等教育機関への入学者・進学率等の推移」
・文部科学省,2025,「令和7年度国公私立大学入学者選抜実施状況」
【step1】スケジュール設計前に不可欠な「3つの準備」
年間スケジュールを設計する前に、まずは戦略の軸となる3つの準備を行いましょう。
①ターゲット設定(ペルソナ策定)
「誰に選ばれたい大学なのか」を定義します。以下のような視点でターゲットを具体化することで、情報を届けるべき時期や響くメッセージが大きく変わります。
- エリア要素:
- 自宅から通える範囲を重視
- 地元を離れ、新しい環境や都市圏へ踏み出したい層
- 目的意識・価値観:
- 資格取得や高い就職実績といった「実利」を最優先する層
- 大学名のブランドや社会的評価、キャンパスライフの充実を重視する層
②自学の強みの再定義
自大学の特色を洗い出し、競合校と比較しながら「なぜ選ばれるのか」を言語化します。
Webサイトやパンフレットなどに掲載されている自大学の価値を、改めて整理してみましょう。強みが明確になることで、競合校の動きと照らし合わせながら、次のような戦略判断が可能になります。
- 競合校とオープンキャンパスの日程が重なった場合、どの強みで差別化できるか
- 競合校とアプローチ時期をずらし、特定のニーズを持つ層を確実に取りにいくべきか
③過去データから読み解く「勝ちパターン」
最後に過去施策のデータ分析です。結果の良し悪しを評価するのではなく、今後も再現できる「勝ちパターン」を見つけていきます。
- オープンキャンパスの参加者は、いつ資料請求をしたのか?
- Webサイトのアクセスが急増したきっかけは何だったか?
【step2】ターゲット別「2軸」で動く年間フロー
高校生は学年により進学に対する関心度や意思決定の段階が異なります。そのため、年間スケジュールは「高校3年生向け施策」と「高校1・2年生向け施策」を切り分け、同時並行で設計・運用することが重要です。
高校3年生(受験生)向け 戦略
高校3年生向けの施策では、主に出願への最後の一押しとミスマッチ防止のための施策を考えます。
【進学先を判断するための情報】
出願判断の後押し
・入試方式・併願戦略・試験日程
・対策講座・学費・奨学金制度
ミスマッチ防止
・学生生活・サポート体制
・卒業後の進路・就職実績
高3生に対しては、「どう判断すればよいか」を整理して伝えることが重要です。WebサイトやSNSなどを活用し、具体的で判断に役立つ情報を適切なタイミングで届ける必要があります。
高校1・2年生(低学年)向け 戦略
高校1・2年生にとっては実際の大学進学はまだ先の話であり、入試情報を前面に出しても響きにくい層です。まずは進学を「自分ごと」として捉えてもらう情報提供を行い、将来の比較検討フェーズにつなげていくことが重要になります。
【進学を考えるきっかけとなる情報】
・学問分野の面白さや社会とのつながり
・将来のキャリアイメージ
・学生生活やキャンパスの雰囲気
【step3】シーズン別・具体的アクションプラン
年間スケジュールを春・夏・秋・冬の4つの時期に分け、「その時期、学生は何を考えているのか」「何を仕掛けるべきか」を整理します。
春(4月〜6月):認知拡大と新入試情報の解禁
新学年への進級をきっかけに、進路を具体的に意識し始める層が増えるタイミングです。特に新高3生にとっては、年内入試を見据えた「情報収集のスタートライン」になるため、判断の前提となる情報を、早い段階で揃えて提示しましょう。
- 新年度パンフレット・募集要項の公開・配布
- 前年度入試結果(倍率・合格実績など)の開示
- 初夏に向けたミニイベントや説明会の実施
夏(7月〜8月):オープンキャンパスで“意思決定を前に進める”
夏休み期間は、大学集客における最大の勝負どころです。高校3年生にとっては進学先を絞り込む決定打の場、高校1・2年生にとっては将来の選択肢を広げる体験の場になります。
- 模擬授業や学部説明
- 在学生との交流企画
- 学生広報スタッフによるSNS発信
この時期の中心施策となるオープンキャンパスでは、上記のような企画・発信を行うだけでなく、次の接点も考えておきましょう。来場後、LINE登録やSNSのフォローを促し、熱量が高いうちに追加情報や個別相談の案内を届けることで、志望度を引き上げることができます。
秋(9月〜11月):出願対応と“大学の日常”の可視化
学年ごとに行動が大きく分かれる時期です。高校3年生は出願を行い、高校1・2年生は大学理解を深める段階に入ります。高3向けには、以下のような不安を解消し背中を押す施策が中心となります。
- 総合型・学校推薦型選抜の実施
- 一般選抜に向けた対策講座・情報発信
一方で、高1・2年生向けには、以下の施策を通じて大学の「日常」や「学生・教員の雰囲気」を伝えることが有効です。
- 学園祭やキャンパスイベントの公開
- 高校での説明会の実施
冬(12月〜3月):一般入試本番と次年度への助走
高校3年生にとって一般入試の最終局面です。Web出願サポートや直前情報の発信など、迷わせず、離脱させない対応が求められます。また、冬は次の勝負のスタートでもあります。この時期に高校2年生の「第一志望群」に入り込めるかどうかが、次年度の集客を大きく左右します。
- 高2向け大学説明会の実施
- 次年度施策の振り返りと改善点の整理
【step4】スケジュールを「形骸化」させない運用テクニック
年間スケジュールは、作るだけではなく「計画をどう回し続けるか」が重要です。ここでは、成果に繋げるための運用のポイントを3つ挙げます。
KPIの多重設定
「イベント参加数」だけでなく、その後の「資料請求率」や「出願率」を追いましょう。数が多くても出願につながっていなければ、スケジュールの内容を見直す必要があります。
広告は「直前対応」ではなく逆算で組む
広報施策の効果を高めるには、「認知→興味→行動」の流れを前提に、最低でも2週間、理想的には1か月前から広告や情報発信を組み立てる必要があります。年間スケジュールと広告出稿を連動させ、「毎年この時期に動く」という型を作ることが、運用の安定につながります。
学内で目的を共有し、動きをそろえる
入試広報担当者だけでなく、教員や学生スタッフとスケジュールや目的を共有しましょう。Googleカレンダー等のツールを活用し、「今、どのターゲットに向けて、何のために動いているか」という認識がそろうことで、対応の質が高まり、学校現場の対応力(ホスピタリティ)が向上します。
まとめ|「低学年への早期接触」と「年内入試対応」で勝てる広報へ
これからの大学広報における年間スケジュールは、受験生の意思決定がどの時期に、どのように進むのかを見据えた「戦略設計図」として機能させることが重要です。
高校3年生には進路判断に必要な情報を過不足なく届け、高校1・2年生には早期からの認知形成や興味喚起を図る。こうした学年別の設計を軸に接点づくりを行うことが、これからの集客を左右します。
また、スケジュールは一度作って終わりではありません。数値を見ながら改善を重ね、自大学ならではの「勝ちパターン」へと磨き上げていきましょう。
次のステップ|年間スケジュールを「具体施策」に落とし込む
年間スケジュールで方向性を定めたあとは、その設計を「どの接点で・どのように実行するのか」まで具体化していく必要があります。そこで、接点づくりの具体策の一例として、企業広告入りの学習ノート「応援ノート」を活用した大学広報の成功事例集をご用意しました。「応援ノート」は配布ターゲットや配布時期を戦略的に設計できるため、年間スケジュール全体と連動したアプローチが可能です。
スケジュールを実行レベルまで落とし込む際のヒントとして、ぜひご活用ください。


