2020年の新学習指導要領から、企業が教育機関と連携し、社会貢献活動を行うことが重要視されています。教育分野における企業の役割は、学校や地域社会にとって大きな影響を持つと同時に、企業側にもさまざまなメリットをもたらします。しかし、企業が学校との連携を効果的に進めるためには、まず文部科学省が示している基準を理解することが重要です。
本記事では、小学校との連携において、2つのポイントに焦点を当てて解説します。

文部科学省が企業に期待する役割
文部科学省の学習指導要領の概要
2020年に改訂された新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」の実現が重視されています。これは、学校教育が社会とのつながりを意識し、実社会で生き抜く力を育むことを目的としているためです。企業との連携を通じて、子どもたちが社会の一員として成長できる環境を作ることが求められています。この「社会に開かれた教育課程*」は、新学習指導要領における基本的な理念であり、学校教育の質の向上と地域社会への貢献を促進するための重要な枠組みとなっています。企業が学校との連携を通じて社会的な役割を果たすことで、社会貢献といったCSR活動の側面だけではなく、次世代を担う人材育成にも貢献することができます。
*社会に開かれた教育課程=新学習指導要領の基本的な理念
「『資質・能力の三つの柱』『カリキュラム・マネジメント』など、新しい学習指導要領における重要な事項の全ての基盤となる考え方」
(引用:文部科学省「社会に開かれた教育課程」2020年)
学習で求められる企業との連携
企業が教育活動にどのように関与すべきかは、学習指導要領に基づいて決定することが重要です。以下に、小学校における具体的な連携の事例をいくつか紹介します。
プログラミング教室
学習教科:総合的な学習
学習内容:
2020年より小学校でプログラミング教育が導入されており、子どもたちは情報技術が生活や社会にどのように関わっているのかを学びます。プログラミングは、身近な生活に役立つ情報技術を理解するための重要な手段となっており、企業はその専門知識を活かして、実践的な学習をサポートすることが求められます。教育機関では、まだ慣れていない授業への準備負担など課題としている部分があるため、企業の技術者が授業に参加し、実際のプログラミングを通じて学ぶ体験を提供することで、子どもたちにとって有益な学習となるでしょう。
(参考:文部科学省 小学校プログラミング教室の手引き 令和2年)
キャリア教育
学習教科:総合的な学習の時間
学習内容:
地域社会で働くさまざまな人々と関わる活動を通じて、子どもたちは自分の将来について考える機会を得ます。働く人が自分の仕事について語ることで、子どもたちは将来の職業選択に対する視野を広げ、夢や希望を抱くことができます。企業側は、自分たちの働きがどのように人々や社会の役に立っているかを紹介し、実際の仕事の魅力を伝えることが期待されています。
(参考:文部科学省 小学校キャリア教育の手引き(第4章・高学年)令和4年)
キャリア教育についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
社会科
学習教科:社会科
学習内容:
社会科では歴史だけでなく、子どもたちは地域の地理や産業、また地域の安全を守るための活動について学びます。例えば、小学3年生の授業では、上記のようなことを子どもたちが自ら必要な情報を調べ、まとめる技能が求められます。そこで企業は、子どもたちに実際に「見て学ぶ体験」を提供することで、学習支援や子どもたちに地域社会の重要性を伝え、企業としてのCSRを果たすことができます。(参考:文部科学省 小学校学習指導要領 平成29年)
学校との連携でCSR活動を成功させる具体的な連携ステップ
CSR活動として企業が学校との連携を進めるためには、綿密な計画と準備が欠かせません。 以下のステップを参考に、効果的に進めていきましょう。
学習指導要領に沿った内容の確認
企業が学校と連携するためには、まず学校がどのような学習活動を行っているのかを理解することが不可欠です。学校が実施している各教科の学習内容や年間の教育課程を確認し、企業がどの分野で支援できるかを特定します。例えば、プログラミング教室やキャリア教育、地域産業の紹介など、企業がどの分野でどのような形で支援できるかを把握し、その内容を学校の指導方針に合わせて調整します。
企業が提供するプログラムが学習指導要領に沿っているかをしっかりと確認することが、連携をスムーズに進めるための第一歩です。
教育現場の要望をヒアリング
学校がどのような支援を求めているのか、また企業に対してどのような役割を期待しているのかを教育現場にもヒアリングすることが非常に重要です。企業が教育現場のニーズを正確に理解することで、双方が協力しやすい環境が整います。例えば、企業が学校に出前授業を提供する場合、その授業の内容や方法、どの学年に適した内容にするべきかなど、学校側の意向をきちんと把握することが重要です。
教育現場と企業が相互理解を深めることで、より効果的な協力関係を築くことができます。
年間計画スケジュールの確認
学校は毎年、学習指導要領を軸に年間指導計画を作成し、それに基づいて教育活動を進めています。企業が学校との連携を進めるためには、学校の年間スケジュールを事前に確認し、どのタイミングで企業が関与できるかを特定する必要があります。例えば、学期の初めに実施される総合学習の時間や、特定の地域行事に合わせたプログラムなど、学校のスケジュールに合わせてタイミングを調整することが求められます。企業が関与する時期や具体的な活動内容をすり合わせることが、円滑な連携を実現するための鍵となります。
また、教育機関は年間指導計画を作成する際に以下のような点も配慮して作成するため、同様に確認しておくとよいでしょう。
■チェック項目
✓学習指導要領、各教科の学習手引きなど
✓季節や学校行事など
✓各教科との関連性
まとめ
企業と学校の連携を効果的に進めるためには、学習指導要領や教育現場の要望、年間計画に基づいてしっかりと調整を行うことが欠かせません。これらのステップを踏むことで、企業のCSR活動が学校教育に役立ち、子どもたちの学びの質を高めることができます。また、学校の連携がうまくいけば、企業にとってもブランド価値の向上、競争優位性の向上、社員のモチベーション向上など多くのメリットがもたらされ、双方にとって有益な結果が生まれるでしょう。
学校と企業が連携したCSR活動として、近年「出前授業」や「出張授業」を実施する企業が増加しています。これらの授業は、企業が持つ知識や専門性を活かし、子どもたちに貴重な学びの機会を提供することができます。
株式会社スフレでは、企業と学校が円滑に連携できるよう、「オーエンクラス」という出前授業サポートサービスを提供しています。このサービスでは、学校のニーズや学習指導要領に沿った授業内容を企業の要望と合致させ、現役の先生と共に教材を作成し、実際に先生に授業を実施してもらうことができます。これにより、企業の専門性を活かした教育活動が、学校のカリキュラムにしっかりと組み込まれます。ぜひ下記資料より、詳細についてご確認ください。
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