新しい人材の採用は、人員を補うだけでなく企業や組織を活性化させるうえで重要な活動です。しかし、少子高齢化による採用市場の激化や、若手人材の離職が増え、採用活動に課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。そのような中で、自社に対する興味醸成や理解を深めたうえで求人を増やす活動として、「採用ブランディング」が近年注目されていています。
本記事では、採用ブランディングの目的や実施プロセス、企業の成功事例などをご紹介します。
採用ブランディングとは
採用ブランディングの目的
採用ブランディングは、自社のブランド力を高める採用戦略を意味します。企業の認知度や求職者の入社意欲を高めるために、給与や福利厚生などの条件だけではなく、企業理念やビジョン、実際に働く社員の人柄など、多面的に自社の魅力を発信することで、自社のファンの獲得を目指します。
優秀な人材の採用や定着が困難になっている現状に対し、ただファンを獲得し応募者を増やすだけではなく、企業理念に共感し長期的に自社で活躍できる優秀な人材を引き寄せたり、定着率を上げることが最終的な目的です。
採用マーケティング・採用広報との違い
採用活動において「採用マーケティング」や「採用広報」という言葉もあります。
採用ブランディングと採用マーケティング、採用広報は、ターゲット・戦略など異なるため、採用活動において戦略を立てる際は違いを把握しておくことが重要です。
- 言葉の定義
採用ブランディング:「興味関心」にフォーカスした活動です。「この企業で働きたい」と思ってもらうために企業のイメージづくりを行います。
採用マーケティング:企業の認知を獲得しながら、求める人材を効果的に惹きつけ、「応募」に至らせるための活動です。
採用広報:「採用」を目的とし、求職者が「この企業で働く」イメージを持ってもらうための情報発信を行います。
- ターゲット層
採用ブランディング:特定の求職者だけでなく、一般の人や小中学生など将来的な人材の候補者まで含まれます。
採用マーケティング:新卒採用や中途採用など具体的な求職者が対象です。
採用広報:新卒採用や中途採用など具体的な求職者や応募者が主な対象ですが、将来的に求職者になる可能性がある人をターゲットにする場合もあります。
- 戦略期間
採用ブランディング:長期的
働きがいのある環境や価値観などの情報を発信し、長期的に企業のイメージを構築していきます。
採用マーケティング:短期的
具体的な求人の応募数の増加や質の向上が目的のため、ターゲティング広告や、イベントの参加、求人広告掲載など短期的なアクションと効果が求められます。
採用広報:長期的
応募や採用者数の向上が主な目的ですが、自社で働く具体的なイメージを持ってもらい応募までつなげるために、認知や興味醸成のための情報発信を行うこともあります。
採用ブランディングの実施プロセス
ここからは、採用ブランディングを行う際の実施プロセスをご紹介します。
1.目的の明確化と自社についての分析
- 目的の明確化:
採用目標人数や定着率の向上、内定辞退数の改善など目的を明確に設定します。 - 自社についての分析:
・事業内容やサービス、福利厚生などの要素から、自社の魅力や問題点を洗い出します。
・競合との共通点や違い、業界における自社の立ち位置などを比較したり、理念・ビジョンなど他社の打ち出し方を把握し、自社の訴求ポイントを絞ります。3C分析やSWOT分析などのフレームワークを活用すると良いでしょう。
2.採用したいターゲットのペルソナを設定
採用したい人物像を具体的に設定します。年齢や能力だけでなく、趣味や価値観、日常的に使用するデバイスなど細かい部分まで人物像をイメージすることがポイントです。社内で活躍している人材をベースにペルソナを設定する方法もあります。
3.採用コンセプトを設定
スローガンやキャッチコピーなど分かりやすい形で表現します。上記1.2.で分析・設定した内容から採用コンセプトにブレがないように設定する必要があります。
また、採用コンセプトを考えるうえで、「自社の強みがしっかりと表現できているか」「シンプルで分かりやすくなっているか」という点も考慮することが重要です。
4.情報発信手段・発信内容の決定
多数ある情報発信手段の特徴を理解したうえで使い分けることが重要です。以下のような要素から発信手段と内容を決め、効果的にアプローチを行いましょう。
発信手段(メディアやSNSの場合)
✓利用者層
✓利用者層の特徴
✓運用リソース
✓コスト
✓期待できる効果
発信内容
✓ターゲットが調べそうなキーワードを使用する
✓自社の魅力や自社らしさが伝わっているか
5.社内周知
自社の魅力を外部に発信し企業のブランド力を高めるためには、社員の理解や協力が不可欠です。設定したブランディングのコンセプトに対して、分析を行った結果を踏まえて理由を共有したり、社員の疑問を解消することで理解を深めてもらい、協力を得やすい体制を整えることが重要です。
下記ブログでは、Z世代に特化した採用ブランディングの具体的な戦略についてご紹介しています。
企業が実践した採用ブランディング事例3選
日本マクドナルド株式会社
日本マクドナルド株式会社では、採用ブランディングにおいて、「企業が従業員へどのような価値を提供できるか」というEVP(Employee Value Proposition)を重視しています。
全世界のマクドナルドが共通で行う独自の教育制度「ハンバーガー大学」が代表的な取り組みです。取り組みの内容は、一流のビジネスパーソンの育成を目的とし、生涯活躍するための「リーダーシップ」「チームビルディング」「マネジメント」を中心に学ぶ研修が行われています。
この取り組みにおいて、採用のゴールを「入社後の活躍」と設定し座学や体験型のアクティビティ、ディスカッションを通してビジネス環境やお客様のニーズに対応する「対応力」を磨いています。
エイベックス株式会社
エイベックス株式会社は、「『モテる』ひと・『つよい』ひと・『うごく』ひと」という採用メッセ―ジを打ち出しています。『モテる』人とは、一緒に仕事をしていて気持ちがいい、この人に仕事をお願いしたいと思われる人。『つよい』人とは、努力を重ね、泥臭い仕事もやり抜く人。『うごく』人とは、変化をポジティブに捉え、自発的に動ける人をさしています。特に『つよい』人は、学生から「華やかな世界」という印象を持たれやすいことに対して、実際の仕事は地道なことや泥臭いことが多く、自社で働くイメージのギャップを埋めるためのワードとして採用メッセージに含まれています。
ポジティブなメッセージだけではなく、苦労する面もターゲットに訴求することで、長期にわたり活躍してもらえる確率を高めています。
第一カッター興業株式会社
第一カッター興業株式会社は、採用ページや採用動画の作成により、採用ブランディングを成功させています。採用ページや動画の作成に至った背景として、若手社員へのリサーチから「仕事の進め方」や「社員同士の関わり方」などの情報が不足していたことが明らかになりました。このような背景から、知性・体力・コミュニケーション力等を備えた「オールマイティ人材」という求める人物像を踏まえ「サムライ採用」というコンセプトを設定しました。また、採用ページでは、「サムライ採用」をコンセプトに「切る」をイメージとして彷彿させるデザインやメッセージの表現、動画を作成し情報を発信しています。
採用ブランディングを成功させるために
以上、本記事では採用ブランディングの目的や実施プロセス、成功事例をご紹介しました。
採用活動において施策を考える際は、まず採用マーケティングや採用広報と目的やターゲットの違いを理解したうえで戦略を立てることが重要です。また採用ブランディングを、実施する際は、自社分析で強みを明確化し、具体的なペルソナを設定することでコンセプトが立てやすくなり、求める人材のアピールへとつながります。
採用ブランディングのアプローチ方法として、スフレの「応援ノート」という選択肢もあります。「応援ノート」は、子どもや学生を対象とした無料ノートを配布するサービスです。ノート中面には企業メッセージを載せることができ、子どもや学生にダイレクトにアプローチすることが可能です。また、工場見学や企業イベントなどでのノベルティとしても活用することができます。
応援ノートを活用した採用ブランディグの事例集もご用意しておりますので、ご興味のある方はぜひ本資料をご確認ください。